へうげもの

 鷲田大臣が「読書日々」で取り上げるのは今回で2回目(3回目?)ということもあり、去年の年末くらいからアニメ『へうげもの』を観始めたが、解説通りスゴイ作品だった。主人公が古田織部正であるこの作品は信長が天下を統一した後(桶狭間の戦い)から秀吉が朝鮮に出兵する前(文禄・慶長の役)という短い期間を扱ったものですが、その中でも明智が討たれる第〇話には男泣きさせられたし、最終話ラストシーンのもう一人の(影の)主人公との2ショットも良かった。

 しかし、この作品の最大のポイントは、やはり“本能寺の変”ということになるでしょう。この政変で信長は明智に自刃を迫られたわけですが、その理由については様々な説が存在します。そして、この作品でも、例に漏れず大胆な仮説を立てている。恐らく、これは歴史マニアの間でも話題になったのではないしょうか。第二東映の時代劇(注1)をほとんど観たという鷲田大臣には、いずれ“剽げた”意見を聞かねば(笑)

 また、登場人物に目を移すと、“うつけ者”である信長のイメージはそのままだとして、秀吉(=人間通)&三成が極悪人として描かれている反面、家康&明智は非常に素晴らしい人物像として描かれている。ただ、これを額面通りに受け止めると、少し間違えるかもしれません。というのも、家康というのは、山岡荘八作品に登場するような“聖人君子”といったイメージの他に、「立川文庫」に登場するような“狸親父”といったイメージが存在するからです。そして、実像は後者に近いというのが本当のところでしょう(注2)。

 一方、この作品で嫌なヤツとして描かれている石田三成ですが、彼にはこういったエピソードがあります。ある日、三成とその親友である大谷刑部は、お茶会に招かれ、みんなでお茶を楽しんでいました。一口飲んだら次の人に器を回すといった具合ですね。ところで、この大谷刑部ですが、彼はライ病といって、体中が溶ける病気にかかっていたので、包帯でグルグル巻きの状態です。

 やがて、そうこうするうちに、刑部のところにも器が回ってきました。彼も他の出席者同様、一口飲んでから次の人に回そうとしましたが、その際、顔の汁が器に入ってしまったんですね。これは、飲んだら伝染すると言われていたので、それを見ていた出席者は、皆一様に飲んだフリをしては次の人に器を回すといったことを繰り返します。もちろん、お茶は一向に減りませんし、どんどん冷めていきます。刑部は早くこの場から立ち去りたいと、恥ずかしさで震えています。

 そして、次に石田三成の番になりました。もちろん三成もそれを見ていましたから、他の出席者同様、飲んだフリをして次の人に器を回す…とみんな思いましたが、三成だけは顔の汁が入っているのを承知で全て飲み干し、またお茶会は楽しく再開されたといいます。刑部の体の震えも止まりました。史実を見る限り、三成が嫌なヤツだったというのは事実のようですが、決してアニメに出てくるような冷酷無比なだけの男ではなっかたということです。

 私は夜8時からのNHK大河ドラマを観るくらいなら、9時から『日曜洋画劇場』を観るといったタイプの人間なので、こういった時代劇を観るのは随分久しぶりだったわけですが、この作品は、そんな私に“時代劇ブーム”をもたらしてくれました。「
ゆとり教育(前篇)」でも書いたように、私の研究対象はあくまで2000年初期までなのて、観るべき新しい分野ができてよかった(笑)ちなみに、今週は宮沢りえ主演の『豪姫』(注3)を観る予定ですが、いまから楽しみで仕方ありません。





(注1)以下が私の《日本映画史》の柱の1つになります。どうです、読みたくなったでしょ?(笑)
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①時代劇:この部分については、いずれ鷲田大臣にテキストを書いてもらうつもりです(笑)
②ヤクザ映画:ここは小林信彦さんでしょうね。
③BE BOP :ここが、荻昌弘氏の解説で映画を楽しんだ世代の新しいところでしょうか?
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(注2)あまりに家康が魅力的に描かれているので、「もしかしてこの原作者は、愛知県出身?」と思って調べてみたら、“マンガ王国・新潟”の人でした(笑)

(注3)初めから教科書を読もうとしても、なかなか頭に入らないので、まずはマンガ本から入るというのが受験日本史のセオリーですが、縄文時代をマンガにしたところで、面白くないものは面白くないでしょう。この映画は『文珍・日本史人物高座』で知ったんですが、私ならマンガ本ではなく、この本を採用します。

 

 


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